BARBER PLACE 店主のくにさんです。

前回に引き続き、映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開記念として、

スラムダンク愛が再燃しているくにさんによる映画の考察と漫画の面白さのプレゼンを、

ちょいマーケティング的な視点でお届けします!

 

▼スラムダンクという体験

さぁ前回興奮しすぎたゆえに長文になり過ぎて、「こんなん誰が読む?」

と一笑に付したあなた。

今回も長くなるから今すぐスマホを閉じてスラムダンクを読むべし!(深津)

 

スラムダンクという作品はとにかく名言が豊富で、なおかつ心に響くんです!

なぜでしょうか…?

一つは、題材が高校バスケ、キャラクターは当然ほとんどが高校生なので、

敵チームだろうが悪いヤツは一人も無く、みんなが真っ直ぐバスケに向き合っていて一生懸命だから。

メインの湘北のメンバーはもちろん、敵である稜南や海南のキャラにもファンが多いのは王道スポ根の特徴でしょう!

 

そしてもう一つの要素は、「絵の上手さと緩急」だと思っています。

漫画スラムダンクの特徴として、おちゃらけシーンでの”フォルムの丸さ”の存在があります。

これが本当にいい味を出していてファンも多いんですが、これが逆にシリアスなシーンを引き立てるんですね。

もちろん絵の上手さも相まって。

コマ割りや演出もほんとに秀逸で、

有名な山王戦怒涛のラスト30秒はセリフすら無く、コート上の10人の研ぎ澄まされた集中力と切迫感が見事に表現されています。

この”無音”の演出は個人的に大好きで、僕が愛してやまないもう一つの漫画『キングダム』でもお馴染みの演出です。

アニメでは味わえない、漫画ならではの迫力(画力)と演出、そしてフォルムのカッコ良さ…

この3点が、スラムダンクを体験する人を熱狂させる理由でしょう!

 

▼名言集(後編)

さて、僕の好きな名言の後半戦に移っていきたいと思います。

本当は200個くらいあるんですけど、ここであえて少しマニアックな名言を1つ。

「ダブルスコアのどこが大健闘なんですか」

この言葉は、キャプテン赤木が1年生の時、初戦敗退した大会帰りの電車内で、

上級生にスコアブックを突きつけて放った一言です。

なぜか僕の心に残っています。

実は僕、スラムダンクのキャラクターの中で、この赤木が一番好きなんですね。

体格に恵まれながらも、わりと不器用…

でもそれを努力で補ってあまりあるほどのバスケ愛と熱意の持ち主として描かれています。

努力の人、赤木。しかしバスケットはチームスポーツ。一人の才能や熱意、努力では全国制覇は成し遂げられません。

1年生の時からチームメンバーの無気力、怠慢に憤りを感じ続けます。

「くそつ、勝ちたくないのか!!」

一人、また一人と辞めていく部員。「赤木、お前とは合わない…」

赤木には理解できません。バスケットボールと真剣に向き合い、勝つために努力を続けているだけなのです。

 

かくゆう僕も昔、高校バレーで似た経験があります。

負けた試合の直後に他チームの女子マネージャーといちゃいちゃしていたチームメンバーを

殴ったことがあるんですねぇ…(ダメだろ)

勝ちたくて仕方なかった。暴力はいけませんが、赤木の苛立ちが当時の自分に重なるんですねぇ。

それにしても女の子といちゃちゃしてなかったら殴らなかったのに…笑

 

赤木はチームメイトに言われてしまいます。

「ここは神奈川県立湘北高校だぜ…。 強要するなよ。全国制覇なんて。

 お前とバスケやるの息苦しいよ」

…そんな赤木剛憲、3年生になりようやく志を共にするメンバーに恵まれるんですね〜。

「ずっとこんな仲間が欲しかったんだもんな…」と小暮。

湘北は赤木のチームであり、赤木が湘北の魂なんです。

いや〜。赤木…最高です。

 

さぁそして最後の名言はやはり、アレしかないでしょ〜。

山王戦怒涛のラストシーン。

セリフ無しのダイナミックな描画と無音演出が続き、1点差で残り時間4秒!

流川がリングに突っ込むも、最強山王の河田、深津、沢北の三枚ブロックに阻まれます。

その瞬間、ゴールの右斜め45度に立ちすくむ櫻木が目に入ります。

「左手はそえるだけ…」

流川がこの試合、初めて桜木にパスを出し、試合終了と同時に桜木はジャンプシュートを決めるんですねぇ…!

そして犬猿の仲の二人が歩み寄り、無言でハイタッチ!!

このハイタッチの描画がクソカッコ良いんです!

もぅ額に入れて飾りたい!店に飾ろかな…

このシーンはもぅ説明不要ですよね。スラムダンクという漫画で(しかもジャンプ)

最後の最後がジャンプシュートですよ?ふつうスラムダンクでしょ?

桜木は確かに常人離れした天才なのかもしれませんが、同時に努力の天才でもあったんです。

レイアップやゴール下のシュートだってひたすら数をこなして習得したし、

合宿で成し遂げた2万本のシュートの成果が、最後の最後はチームを勝利に導いたんですね。

この山王戦のラストは、間違いなく誰がなんと言おうと漫画史に残る天才的な名シーンです!

僕なんか初めてスラムダンクを読んだ中学生の頃からずーーっとこのシーンの余韻に浸っておりますよわたしは。

そんな漫画ある?すごくね?

 

一説によると、スラムダンクが突如として連載を終えたのは、

湘北同様、山王戦で全てを出し切った井上先生の意向だとか…

まぁ、真相はわかりませんが結果としてそれが、

いよいよスラムダンクという漫画を伝説へと押し上げたのです。

 

▼スラムダンクという伝説

スラムダンクがこれほどまでに人々に愛される作品たりえた要因は、

おそらく大きく分けると2つで、1つは圧倒的なクリエイティブ。

そしてもう1つは、ピークで終わったから。…です。

物語はふつうピークで終わらないんです。広げたストリーの収拾を付けなきゃいけないし、

コンテキストの整合性も取らなきゃいけないし、張った伏線も回収しなくちゃいけない。

それをほぼ放棄して、スパッと終わったのがスラムダンクなのです。

 

多くの謎と疑問と期待を残しましたが、連載終了後26年、一切音沙汰なし!

これが許されたのも、「ピークエンド」だったから。

「ピークエンドの法則」は、歌手や俳優などの有名人に当てはめると、すごくわかりやすいです。

輝かしいキャリアのピークで亡くなったジェームズ・ディーン、同じく美空ひばりや尾崎豊。引退した山口百恵、安室奈美恵…。

みな伝説と名声をほしいままにしています。

 

もしスラムダンクが、山王戦後の3回戦も描き、赤木や小暮が引退した後の新生湘北チームの奮闘や、櫻木の更なる成長を

描いていたとしたら、今ほど僕たちの心に残ったでしょうか…?

ピークエンドの法則が、スラムダンクを伝説に押し上げたのです!天晴れ!

 

そして…

沈黙を守ってきたその伝説が、再び幕を開けるのだっ!

12月3日、試合開始っ!!

あ、僕は5日に仕事サボって劇場行きまーす。